4月から6月末までデンマークのフォルケホイスコーレ(略称フォルケ。全寮制の大人のための学校。気になる人は下の記事をどうぞ。)に留学して、戻ってきてから1か月と少しがたった。
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戻ってきてからしばらくは留学で学んだことの整理や仕事探しに時間を使ったり、今後の人生のことを考えたり、いろんな人と会って話をしたりしていた。
最近就職が決まりつつあって、その職場でのアルバイトがはじまってからまた気分が変わってきて、少し心に留めたいことがあるので書いてみる。
先にざっくり内容を言うと、
「デンマークから日本へ帰った今、しんどさを感じてるけど、留学で感じたことを日本でのこれからの人生にも生かしていきたいなあと思っている。」そんな話です。
なんかつまらなさそうやな…
まあ気取らずに適当に書いてみます笑
デンマークは本当に人に対して寛容でおおらかな人が多かった。(人に対してって書いたのは自分にも他人にもおおらかって意味です。制度や環境に不満があるとすぐに意見を出して変えていこうとする)
以前南欧を旅行していたときは、電車でぶつかってしまって舌打ちされたり、出航ギリギリに港について怒られたりしたこともあったけど、そういうことがデンマークでは2か月半の滞在中一度もなかった。
留学生であり外国人の僕に対して寛容なだけじゃなく、デンマーク人同士でも同じだ。
例えば電車に大型犬を連れて乗ってきたデンマーク人の若い女性に対して周りに文句を言っている人はいなかった。そもそも皆結構自由で、博物館の庭に生えていたアスパラガスを、フォルケの先生が勝手にちぎって食べていた。
「『ここではこれができる』というのはあるけど、『それはしていはいけない』というルールはこの国にはないんだよ」僕にも食べるように勧めながら、その先生は言っていた。
やたらと長く太いそのアスパラガスは生で食べても全然おいしくなかった。
学校でパーティーがあれば体育館や外で酒を大量に飲んで散らかし、こぼしまくる。でもあとで掃除さえすれば何も問題ない。そういう感覚だ。
デンマークの人口密度は日本の3分の1程度。街にいても人は多すぎないし、労働時間を厳しく国が規制していて国民全体が働きすぎることなくのんびり余暇を過ごしているから、そこにいれば自然とリラックスできる。
そんな国で約2か月半を過ごした。
留学が終わるころ、フォルケで仲良くしていたデンマーク人女性に心配された。「デンマークのフォルケホイスコーレに留学したあとで自分の国に戻ったら適応できないということがよくあるの。特に日本は働きすぎる国だから心配。うまくやってね。」
その言葉に僕は、
「自分は今デンマーク人並みに自由なマインドを持っているけど、表面上は日本人に合わせていけるから、大丈夫」
たしかそんなふうに返事をしていた。
拙い英語やから伝わったかどうかはわからないけど。
・帰国して感じた苦しさ
だけど、帰ってからしばらくはやっぱりしんどかった。
デンマークは6月でも寒い日には上着がを着る人もいるほど。夏も暑い日は少なく快適だ。
そこから日本(特に僕の住む京都は盆地なので湿度が高くじめじめしている)に帰ってきて単純に外にいるだけで体がしんどいっていうのもあった。
だけどしんどいのは明らかにそれだけじゃなかった。
忙しく歩き回る人々、街中にある大量の広告、店に入ると流れているやたらと音量の大きい音楽、お金を使わずにのんびり休める場所が外に少ないこと。
情報と刺激が多すぎる…!
そして、ほとんどが日本人だから「外ではこうするのが当たり前」、「この状況ではこうすべき」という非言語的なプレッシャーを感じてしまう。
僕がそういうのに敏感なのかもしれないけれど、しんどかった。
経済的なプレッシャーが強かったのもある。
「早く仕事しないと貯金が尽きて生きていけなくなる。」
フォルケは住居も食事も保障してくれたからその心配はなかったんだった。
・夏の蒸し暑い気候(京都暮らし)
・情報量の多さ
・非言語的なプレッシャー(同調圧力、義務感)
・経済的な不安
帰ってからしばらくこういうことに苦しんだし、今も少し苦しんでます笑
・留学して感じたこと「もっと気楽に生きていい」
一方で、日本にいたって、本当はもっと自由でいいはずなんだとも思う。
デンマークは高齢者向けの年金や障害者向けの給付だけでなく、若者向けの社会保障もかなり充実している。大学院まで学費は無料だがほとんどの学生はSUと呼ばれる生活援助金を月8万円ほど支給される。
それに加えて休暇などにアルバイトをして稼ぐから(最低時給約2000円)、学生はかなり優雅な生活を送ることができる。
しかも高校を卒業してすぐに大学に行くのが当然というわけでもなく、アルバイト生活を経験してから大学に行ったり、大学を中退してフォルケホイスコーレや別の大学に入り直すこともあって、20代後半までは学生という人が多い。親にお金を出してもらったり、奨学金を借りたりすることなくそういうことができるのだ。
僕の友人のデンマーク人(23歳男性)は、ドイツの音大を目指して勉強していたが、かなりリラックスした生活をしていた。
モダンでおしゃれなシェアハウスには絵画や植木、楽器や趣味の本が充実していて、土曜日は近くのロックフェスにふらっと出かけて友人と遅くまで飲んで、日曜日は一日のんびりするなど。
生活の余裕がすごいのだ。笑
彼はとても性格がおおらかで、当たり前のように自分のしたいことを中心に日々を過ごしていた。
経済的な余裕の有無が人のメンタルにあたえる影響は計り知れないと思う。
日本にはそんな若者向けの社会保障はないから、こんな優雅な生活は僕には送れないけれど、少なくとも「20代半ばにもなればバリバリ働くのが常識で、自分もそうすべきだ」、なんて固定概念はふっとんだ。
したいことをするためにお金が必要だから働く。本当はそれくらいシンプルでいい。
もちろん社会のために働きたいって気持ちがあればもっといいんだろうけど、
働くのが当たり前で、周りが働いているのに自分が働いていないと不安だから企業に勤めるというのは少し違う気がした。
・日本人でも自由に生きてる人は結構いる
日本は物価のわりに最低時給が高くないから、フリーターとして生きるのは楽じゃないかもしれないけれど、なんだかんだマイペースに生きている人は結構いる。
デンマークで出会った日本人は面白い生き方をしている人が多かった。
学生と病院勤めを交互に繰り返すような生き方をしている看護師や、10年以上日本の新聞社で働いたあとデンマークに留学に来て、帰国後は転職して全く違う仕事をする予定の男性、結婚後、新婚生活が始まる前に一人で留学に来た女性、高卒後デンマークに来ていろんな人に応援してもらいながらヨーロッパ中を自転車で回っている若者など。
大学卒業後バイトをしながら、家族ができるまでは趣味に没頭するという生き方もあっていだろうし、正社員になっても違う仕事をしたくなったら転職するのも別にありだし。
日本で僕の周りの同世代(20代半ば)の人たちを見ていて最近感じるのは、(高学歴の男子は特に)正社員として働かないといけないっていうプレッシャーが強すぎるんじゃないかなってこと。しんどいよね、たぶんそれって。
・異文化を知って何が良いのか
海外で暮らしてみることのメリットはいくつもあるだろうけど、そのうちのひとつで僕が大事だなあと感じるのは、
「自分の常識や、無意識的にやっていた習慣やこだわりの中には、
他の国の人から見れば異常なものもあって、その中には、冷静に考えたら自分でもばからしいようなこともたくさんある」って気づくチャンスがあること。
例えば「長時間でも働くのが美徳」とういう価値観や、週末もパソコンカタカタやってなんか作業したり、本読んで何か学ぼうとしたりする習慣(僕の出身大学だと結構そういう人多い)は、デンマークやアフリカの多くの人たちからすれば結構異常だし、「週末は外で遊びなさい」ってむしろ怒られたりする。
袋を持っていけば済むのに毎回コンビニでビニール袋をもらって捨てるのも、デンマークでは絶対ありえない資源の無駄使いだ。
「こうじゃないといけない」「普通はこうするものだ」ってこと、ちゃんと理性で考えたら実は根拠のないものが多い。
無意識的に周りの影響でできていった不必要なこだわりに気づかずに、変えようと思いもしないのってちょっと不自由だ。
自分はできれば、働きながらも内面はリラックスして好きに生きられるように、これから日本でも工夫していきたいなと。
僕みたいな繊細な性格の人間には、日本で働きながら気ままに自由なマインドで過ごすのって難しそうなんだけど、たまにこのブログに戻って、どうすればそれができるか考えてみようかなと思ってます。