気ままに暮らすためのブログ

1992年生まれ。大学で臨床心理学などを学んだ後デンマークに留学し、帰ってからは奈良で働いています。働きすぎず、のんびりゆったり生きたい。

デンマークで福祉を学んだあと日本で働く僕が、日本の福祉施設の労働環境を絶対に改善した方がいいと思う理由。

 

留学の経験を整理したり、今後の生き方を考えるためにあえて仕事を入れず、少し時間をもてあましていた7月とは打って変わって、8月と9月の前半は大学時代からのバイト先であるパソコン教室や奈良の福祉施設でのアルバイトをして、わりと忙しく働いていた。

もっと忙しい人が日本にはたくさんいるんだろうけど、デンマークのゆったりした時間の流れを2か月半経験した僕にとってはかなり忙しく感じられて、心が落ち着けない期間だった。

 

 

通っていた大学のある京都に今も住んでいるので、奈良に通うのは2時間ほどかかり、通勤時間が長いのも疲労になっている。大学時代の友人に2時間以上かけて自宅から通学しているという人がいた(僕も事情があって4回生の3か月間だけそうだった)けど、それが続けられる人って本当にすごいと思う。

 

デンマークから帰国後、福祉の分野で働きながら精神保健福祉士の資格をとるための勉強をするつもりでいた。

運よく、今バイトをしている奈良の施設で正社員を求めていて、秋からでも働けるというので実習も経験させてもらったのだが、職員の長時間労働の様子を見て勉強との両立が不可能だと感じ、面接の際に非常勤での雇用の継続を希望したのが3週間ほど前のことだ。

いろいろあって、結局正社員として働くことになったんだけど。

 

社会福祉の授業で労働環境を習う 

 

デンマークで僕が学んでいた学校(ノーフュンスホイスコーレ)の福祉の授業は、福祉国家であるこの国の社会福祉制度や、介護理論、対人援助職の

コミュニケーション理論などが中心ではあったが、「(福祉の現場の)労働環境」についてもかなり力を入れて授業をしてくれた。

 

デンマークでは、労働者の権利は人権のなかでも大切なもののひとつで、職種別の労働組合が強い力を持っている。

そんなデンマークはヨーロッパのなかでも労働時間が短い国だが、ただ単に長時間労働が少ないだけでなく、働き手がモチベーション高く働けるように、様々な工夫がどの職場にも施されている。ベストのコンディションで働けないと、仕事の効率や質も悪くなること、プライベートのことと仕事の両方を大事にしてこそ仕事がはかどるという考え方が国全体にあるのだ。

 

 

デンマークの労働条件、労働環境については以下の例が参考になるかと)

 

www.facebook.com

 

二つの労働環境

 

 この国では労働環境はハード環境とソフト環境に二分される。

ハード環境は例えば、職場の部屋の作りや内装、心地よさ、安全性、明るさといったもので、ソフト環境は職員同士のチームワークや関係性、リーダーと他の職員の関係や、各職員がプライベートとのバランスをとって働けているかなど人間関係や労働者の内面に関するものだ。

 

以下、授業で扱っていた福祉施設の例を紹介するが、おそらく一般企業でも大きく変わらない。

 

 

職員の中に、ハード環境を向上させる代表者とソフト環境を向上させる代表者が一人ずついて、職種別の労働組合の研修を受けながら職場の環境向上に取りくみようになっている。

 

たとえば、職場環境に関する匿名のアンケート調査を実施し、その結果をリーダーに伝えて環境改善を求める。デンマークには企業別の労働組合はなく、職種別になっている。企業内に労働組合があると労働組合のメンバーが全員、その会社に雇われることになり、雇用者に対して強い働きかけができなくなるという考え方からだ。

 

それぞれの施設の代表者2人は、労総組合での研修に出るために仕事を休むことが認められていて、当然その日分の給料は保障される。職員の仕事の質を向上させるための代表者たちの活動は、雇用者にとっても重要だ。

 

労働組合での研修で代表者2人は、他の施設の代表者たちと情報交換をし、他の会社に比べて自分たちの施設で遅れているところはないかなどを確認し、もしあれば施設のリーダーに報告し、環境改善を促す。

 

他にもどの企業でも行われているのが、MUSと呼ばれる、直属のリーダーが最低年に1回、労働者がプライベートとのバランスを取りながらモチベーション高く働けているか尋ねるミーティング。人間関係がフラットなデンマークではこういう場で社員は上司に本音で話すことができるんだろうけど、上下関係の強い日本の職場では難しいかもしれない。

 

介護職(ペタゴー)を目指す人たちのための大学 では、労働組合の職員が、労働環境を向上させるための仕組みや、介護の現場で働く際に自分の心身を大切にすることが重要であることなどを話しに来るらしい。それだけ、国民が安心して生きるために重要な、福祉職の職員がデンマークでは大切にされている。

 

日本の状況

 

さてさて、そんなことを授業で聞いて、労働環境を向上させるシステムがデンマークで整っていることにおどろいた僕が日本に帰ってきて福祉施設で働いたり、介護職員初任者研修という以前のヘルパー2級にあたる講座を受けていて他の施設の人の話を聞いていて感じるのは、

 

・労働時間が長くスタッフが疲弊していること

・人手が足りず、雑務に追われていて利用者とゆっくり関わることができないこと

・上司がさらに忙しく、若手職員が利用者との関わり方や悩みについて相談できる状況ではないこと

などだった。

 

 

初任者研修では、「忙しい時こそ丁寧に利用者と関わること、日々のコミュニケ―ションを大切にすること」が強調されるけれど、実際忙しすぎてそんな余裕がない現状があるようだ。

 

僕が働いている職場はまだかなりマシな方で、スタッフやボランティアの数が結構多くて悩みや関わり方を先輩スタッフに相談することもある程度はできるが、

施設によっては利用者の5分の1くらいの数の職員で回しているところもあるようだ。

 

 

普通に考えて、一人の利用者のニーズをしっかりくみ取って余裕をもって関わっていくためには、利用者1 対 介助者1 の割合が理想ではないかと思う。

家族介護や、子育てのことを考えてほしい。家で一人で複数人の子どもを育てるのは大変だし(それをやってるお母さんはたくさんいるけれど、大変なのは事実だろう)、1人で4人のおじいちゃんおばあちゃんの介護をするのは不可能ではないか。

 

デンマークの重度重複障がい者の入居施設では、夜勤固定のスタッフも含めれば利用者の倍の専門スタッフが雇用されていた(利用者46名の施設で100人以上の職員。ちなみにデンマークの障害者、高齢介護施設はすべて公立で、人権費は全て税金から出る)。


僕が留学してわりとすぐに見学に行った、利用者12名で職員7人の障害児幼稚園。そこで理学療法士として働く方は、今の課題として、子どもと余裕をもって関われていないことを挙げ、きちんと関わるためには1対1で対応しないといけないということを言っていた。

 

実際税金も高くなく、福祉国家ではない日本でそれを実現するのは不可能だろうが、

せめて職員1対利用者2くらいの割合を実現するべきだと思う。

 

そうしないと高齢者介護であれ障害者福祉であれ、利用者にとって満足いくケアなどできないと思うし、職員のバーンアウトもなくならない。

ただでさえ給料の低い仕事で心理的・体力的な負担も多く、悩みを相談できる機会や場がないとなると辞めない方が不思議なくらいだ。

 

 

 

日本政府は一刻も早く、介護職員の待遇改善のために手を打った方がいい。

保育士、教員の労働環境が注目されていてそれも本当に大事だが、障害者福祉、高齢者福祉も同様だ。