考え事と生活の記録

とりとめのない日々の記録です。

使えるお金が少ないことのメリット ー「壊れた世界で”グッドライフ”を探して」を読みながら思うこと。

 

 

 

僕は知っていた。現代では、ヒトという種の食欲が地球の資源を上回っている。気候変動から森林破壊、種の絶滅から漁場の枯渇に見られるように、人間は自分たちのすみかを食いちらかしている。もはや消費行動は道徳の問題と不可分だ。

 ーマーク・サンディーン「壊れた世界で”グッドライフ”を探して」より

 

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この本に出てくる4組の夫婦は、環境に配慮しない消費活動や電力・石油の使用をできる限り控えて、食物を自分で育てたりしながら、「豊かな生活」を実践しようとしている。

 

シンプル・ライフというと聞こえはいいけれど、実践するとなるとそこには多くの葛藤や苦労がある。彼らの生活の中身に深く踏み込んだこの本を読み、その想いを、インタビューした著者の目を通して聞いていると自分も、日々の暮らし方について見直さずにはいられない。

 

僕はわりといろんなことに関心を持つタイプで、そのときその時のブームみたいなものがある。「自然(nature)」というキーワードでいろんな本を読むようになったのはデンマークから帰国したころだろうか。図書館でNATURE FIXというタイトルの本を見つけて、自然の中にいることが脳にもたらす影響についての研究について、夢中になって読んでいたのが、去年の秋ごろだった。

 

デンマークで僕が住んでいた全寮制の学校は田舎のなかにあったし、先輩につれられて遊びに行った別の学校には、敷地内にツリーハウスなどがあり、自然のなかで自由に読書をしたり、他の人と話をしたりしながら学べる素敵な場所だった。デンマーク生活で自由に物事を考えたり、普段は離さないようなことを放課後に友達と話せてそのなかからたくさんの気づきを得られたのは、自然に囲まれた場所で暮らしていたからだったと思っている。

 

 

 

そこから僕は”自然”というものに関心を持つようになり、やがて環境問題や、それに配慮した個人の生き方についても考えるようになった。

 

www.nhk-book.co.jp

 

 

 

最初に引用したように、地球の資源には限りがあって、人間ひとりひとりの生き方は環境というものとつながっている。自分一人が環境に配慮した生活をしたところで大きな変化はないかもしれないけれど、自分の食生活や電力の使用が地球資源と結びついていることは確かだ。

 

僕は今福祉職で働いていて、同世代で働いているほとんどの友人より給料が少ないと思う。そのことに不満もあるし、人材が不足しているのだからもっと福祉職の待遇はよくなるべきだと思うけれど、給与が少ないことは悪いことばかりではないことにも気づいたし、この本を読んでその思いは強くなった。

 

僕の安い給料から、家賃などの固定費や、資格取得に向けて毎月貯蓄している額を除けば、一か月に使える額は約5万円ほど。そこから食費や、友人と会うための交通費、娯楽、旅費などをやりくりしている。

 

そうなるともちろん、贅沢はできない。コンビニでご飯を買うことはほとんどないし、

ほぼ毎日弁当を作り、朝晩も自炊している。肉を使うと高いから、お揚げや卵などでタンパク質をとり、安い野菜を使っている。限られた予算の中で、体調を崩さないようにバランスを考えながら、料理をするのは難しくもあるけれどチャレンジングでおもしろいとも思っている。

肉を食べないようになってからおなかの調子がいいし、炒め物などで薄揚げを肉代わりに使うとだしが出て意外とおいしい。

 

今日これから、ホームセンターで土などを買ってきて、狭いバルコニーで家庭菜園を始めようと思っている。これも食費を浮かすためだ。お金に余裕があればやっていなかったかもしれないことだが、結構楽しみにしている。

 

制限のなかで工夫をするおもしろさを知る

これがまず、お金が少ないことのメリットの一つだと思っている。

自由にお金を使えるとできることは増えるけれど、お金を使わずにどう工夫して楽しむか考えるのもなかなかおもしろい。無制限のWifiを契約すると高いから、制限付きのにして、なるべく公共のWifiにつないで使うとか、おいしい節約レシピを考えるとか。

缶コーヒーを買うと高いから、魔法瓶にコーヒーを淹れてでかけたり。

 

サイクリングをしたり、知らない場所をジョギングしたりするだけでも十分楽しめるし、図書館を利用するなど、すでにあるものを有効活用するのは新しくものを買うよりも穏やかな満足感が得られることもある。

 

ものを大切にするようになる

 これも大きなメリットだと思う。お金がたくさんあれば買えるものが増えるから、資源も無限にあるような錯覚に陥ってしまうけど、実際はそうじゃない。日本の都会に住む裕福な人たちがしているような消費の仕方をすべての国の人がすれば、今よりも早いスピードで石油はなくなり、食糧もより不足していくに違いない。

 

使えるお金が少ないとそうはならない。服を長い間使ったり、もらいものを大切にしたり、友人と本の交換をしたり、食材もできるだけ捨てずにきちんと使うようになる。

長く使っている服には愛着がわくし、読み終わった本を人にプレゼントして喜んでもらうのは嬉しい。

 

贅沢な時間の喜びが増す

ずっと節約ばかりではしんどいから、たまに映画を見に行ったり、友人とおいしいものを外で食べたり、お酒を飲んだりする。普段質素な暮らしをしていると、そういうときにより嬉しく思えるようになる。

普段1食200~300円くらいで抑えていると、松屋で牛丼と豚汁を食べる(470円)だけでもかなり満足感が得られる。

お金がないことで低コストで幸せを感じられるようになる。

 

貯金がしやすくなる

こんなふうにして、最低限のお金で生活することに喜びを見いだせると、貯金ができるようになる。僕は給料日に一定額を定期預金するようにしているんだけど、だいたい月10万円くらいで生活できるようになると、給料が増えたときにより貯金できるようになる。それによって普段から散財するのではなく、より充実感を得られるものにお金をかけられるようになるんじゃないかと思う。

 

環境に優しい暮らしができる

本に出てくるアメリカ人たちのなかには、日本円にして年間100万円くらいで生活している人もいる。自分たちで畑を耕し、車を使わず電気なども使用しない生活だからそれくらいの支出になるんだろう。

僕はそれに比べたらたくさんお金も使うし消費しているけれど、車を持っていなくて(仕事で職場のをよく使うが)移動は公共交通機関か自転車、食事も肉はほとんど食べず植物性のたんぱく質がほとんどだから食糧エネルギーの効率もいい方だと思う。

電気やガスのことも気にするから、それなりに環境に配慮した暮らしができているんじゃないかと思っている。

今こうやって電力を使ってブログを書いていることは、本に出てくる人たちに言わせれば電気の無駄使いになってしまうのかもしれないけれど。

 

 

普通に考えたら、給料は高い方がいいんだろうし、僕も旅行が好きだからもっと上がってほしいと思うけど、意外とメリットもあるんじゃないかと思ってまとめてみた。

今の日本は物質的にとても豊かで食料も安く出回っているから、案外年収200万とかでも、場所によっては充分幸せに暮らせるんじゃないかと思う。

個人的には、家賃の安い地域土地の、図書館や安いスーパーの近くに住むっていうのは大事になってくると思っている。あと、近くに川や公園などの自然があるってのも大きいかもしれないな。