書きながら考えたこと。

奈良で暮らす20代の男の、とりとめのない日々の記録です。

水草とゴミが眩しいくらい綺麗な本(7日目)

 

目指していた植物屋さんは、2時間くらい歩いた先にあった。

以前川が流れていた場所を埋め立ててできた細長い広場に入ると、正十二面体を切り取ったような変わった形の建物が見えてきた。GREEN LOFTという名前のそのお店は、多肉植物や季節の花のほか、ドライフラワーやガーデンニングに使う様々なアイテムが揃っていた。

 

店内は小さなジャングルにいる気分になるほど植物にあふれていて、その店の雰囲気は僕に、一冊の小説を読んだときの感覚を思い出させた。おそらくもう10年以上も前に一度だけ読んだ本で、大人になった主人公がアクアプランツショップをしている小説だった。いつか、入院して暇そうにしていた兄にプレゼントした本だ。

 

主人公の智史(さとし)が営むアクアプランツショップでの物語や、子どもの頃に智史が好んでいた水草たち、友人の佑司が描いていた絵がすごく綺麗だったのを思い出してまた読みたくなり、最近できた本屋さんで買って読み返していた。

 

序盤から大量に出てくる植物の名前、水草の世界にのめりこむ主人公の心情描写。著者が発達障害だと知ったときの驚きは、再読していくうちに小さな納得に変わった。

 

 

 

放課後は天国だった。学校の裏手には1本の用水路と、それと並行して流れる小さな川があった。さらに、そこからは細やかな支流や疎水が枝を伸ばし、その先には湿地や沼や、あるいは清明な水をたたえる奇跡のような湧水池が僕を待っていた。疎水にはヤナギモやササバモ、ヒメミクリがたゆたい、沼や池にはキクモやクロモが繁殖し、水面には帰化植物の巨大なホテイアオイが浮かんでいた。

 

物語の中心になる3人は、子どもの頃から、周りの大多数とは違うことに関心を持っている。ゴミ捨て場にある”立派な”ゴミを描いたり、放課後に必ず水辺で水草の観察をしていたり、そんな変わった2人のことを何よりも大事に思っていたり。彼らは当然のように学校のクラスのなかでは立場も弱く目立たない存在なのだけど、そんなことは気にも留めず、自分たちの好きな世界に当然のように浸っている様子が、昔の自分にはうらやましく映っていた。

 

大人になって、好きな仕事につき、好きな人たちと関わることが増え、趣味もできて、昔よりかなり自由に生きることができるようになった。そんないまでも、人目もくれず、大事なものを当たり前に大事にし続ける彼らの生き方には憧れる。

 

そして後半になるほど重要性を帯びてくる、80歳になるまでライバルに負けじと400m走の練習を続けていた主人公の父親の役割もおもしろいし、いいことを言っている。

 

父さんが言っていたことはごくシンプルな教えだった。

いいものを食べられるようにならなくたっていい。金のかかった身なりなど必要ない。いつも清潔にしていればいい。ひとを喜ばせるような仕事をしなさい。いつも優しくありなさい。

 

次は親になったあとにでも(もし叶うなら)、もう一度読み返そうと思う。

 

 

 

 

 

 

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