考え事と生活の記録

とりとめのない日々の記録です。

こころと人生を丁寧に見つめること

今週のお題「最近おもしろかった本」

 

 

転職が決まり、当事者への直接的な支援がメインでは無いものの、ずっと関心のあったメンタルヘルス領域にかかわるようになった。

 

たまたまこのタイミングで、臨床心理学者の東畑開人さんの本を蔦屋書店で見つけて読んだらおもしろくて、「何でも見つかる夜に心だけが見つからない」に続き、「心はどこへ消えた?」をいま読んでいる。

 

ちょうど今日は、メンタルヘルスデーなので、この本を読みながらなんとなく考えてることを書いてみる。用事があって京都へ向かう電車で。僕は東畑さんと違って大したことは書けないのだけど、メモに残すつもりで。

 

東畑さんは、直接お会いしたことはないけれど、大学の大先輩だ。僕も大学時代は臨床心理学を学んでいた。

 

「心はどこへ〜」は、週刊誌への連載記事を集めたもので、原稿の仕事があるのにスマホゲームにはまってしまう東畑さん自身のダメな一面なんかをさらけ出していておもしろい。

 

そのなかで書かれているのが、一人ひとりの物語を構築していくことの大切さ。

詳しくは書かないけれど、カウンセラーとの関わりを通してクライエントが自分の人生をふり返り、ひとつの物語を作り上げていくなかで、自己認識や他者との向きあいかた、周りの人間関係に少しずつ変化が起きていくような例が載っている。

 

本のなかで、韓国のチェジュ島の霊能者、ポサルの話が出てくる。不遇な時代を過ごした女性が、親戚に連れられて町のポサルのもとにいくと、治りたかったら修行をしてポサルになるしかないとその先輩ポサルに言われる。

彼女は葛藤ののち修行をし、ポサルとして占いや儀式を行うようになる。ポサルの仕事のしんどさを自覚しながらも、その仕事をしたことで得られた喜びについても、筆者に語る。

 

虐待とか、幼い頃の親との死別とか、極度の貧困とか、心を病むような苦しい経験をして、その経験を理由に、似た苦しみの渦中にいる誰かを救うために活動している人が、僕の周りにもたくさんいる。

 

大きな苦しみと何度も向き合って、いまも苦しみながらも、何か前向きなアクションを起こす。

 

過去の自分から今の自分に至るストーリーができると、過去の苦しみが意味を持つようになって、絶望的な状況さえもいつか肯定できるようになったりする。しんどさのおかげで、自分の心が求めていたものに気づけたとしたら、それだけでも価値がある。

 

深層心理学系のカウンセリングは、エビデンスがないとか、時間がかかりすぎるとか、いろいろ批判もされてきたけど、やっぱり、揺らぎながらその人の深いところの傷つきとか欲求とかを丁寧に見て、一緒に気づきを得ていくことには時間が必要だし、ストーリーテリングにも大きな価値があるんじゃないかと思う。

 

「何でも見つかる夜に…」は、事例を通して、本を読みながら自分の心を丁寧に見つめ、人生の物語を組み立てていけるような本なので、そちらもかなりおすすめです。