日記と考え事のメモ。

大学卒業してからデンマークのフォルケホイスコーレに来てます。帰ってからのことは未定。

9月3日に東京に行った話①お風呂の話

すごく久しぶりに文章が書きたくなったので、短いのを何度か、しばらく続けて書きます。

 

 

お風呂の話

 

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 銭湯でよく見るケロリン桶のサイズが、関西と関東では違うということをご存じだろうか。おそらく皆さんにとってなじみのある関西のケロリン桶は、直径21cm、高さが10cmであるのに対し、関東のものは直径、高さの両方がそれより1.5cmずつ大きいのだ。重さにいたっては100gも関東のほうが重い。

 

 

 ケロリンとは、内外薬品株式会社の鎮痛薬の名前である。東京オリンピックの前年、銭湯の木製の湯桶が衛生面で問題視されるようになり、合成樹脂製のものに取り換えられようとしていた。それに目をつけた当時23歳の陸和商事の営業担当が、「湯桶に広告を出しませんか」と内外製薬に持ちかけたのがきっかけで、全国に広まった。

 

それではどうして関東のものは大きく、関西のものは小さいのか。その理由は、関西と関東の入浴文化の違いにある。

 

 

 先日東京に行く機会があり、その夜、横浜の日吉にいる友人の家に泊めてもらうことになった。日吉駅の東側には慶応大学のキャンパスがある。西側は蜘蛛の巣のように、同心円状と放射線状に道があり、そこに学生向けの安い飲食店がたくさん並んでいる。友人の仕事がその日遅くまであるというので、会う前に銭湯で短い旅の疲れをいやすことにした。

 

 

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   日吉駅から北に7分ほど歩いたところにある銭湯は、浴室に入って正面の壁に富士山ではない山の絵が大きく書かれている。露天風呂があるのがうれしいが、 サウナが別料金なのは少し残念だ。大きなケロリン桶が、浴室に入るドアのすぐ左側に積み重ねられていた。

 体を洗ったあと、ケロリン桶を使ってかけ湯をし、湯船につかる。浴室全体を見渡すと、子供二人と父親の家族のほかに、おそらく慶応大学の学生や、ほかにも壮年の人たちが数人いる。子供たちは露天風呂から上がってそのまま水風呂に入っていく。近くにケロリン桶があるにも関わらずだ。サウナから出た大人たちは、シャワーで体を洗ってから水風呂に入る。なんと、浴槽に入る前にケロリン桶を使ってかけ湯をするのは自分しかいないのだ。

 

 風呂桶を使ってかけ湯をする文化があるのは、実は関西だけのようだ。ケロリン桶は、風呂桶を使ってかけ湯をする関西人にとって使いやすいようにと、入る湯の量が少なく持ちやすいサイズで作り直されたのだ。

 

 旅先で銭湯に入ると、その土地で生活している人たちの日々の生活を垣間見れたような気分になる。風呂に入りながら学生たちが話すとりとめもない内容に、ちょっとした文化の違いを感じ、彼らが話す方言によって、自分が普段住む場所とは違う世界にいることを意識する。横浜の人はやっぱりDeNAが阪神に勝つと喜ぶし、露天風呂で「競馬で6万負けた」などと友人どうしで話していた(おそらく)慶応大学の学生は、どう考えても自分より裕福だ。

 

 

 それにしても、小さいサイズのケロリン桶が京都、大阪と兵庫あたりでしか使われていないというから驚きだ。自分にとっての当たり前は、あまりにも多くの人にとって、当たり前ではないようだ。人を理解しようと努める前に、人に自分を理解してもらう努力をするべきなのかもしれない。

 




 (この文章は、関西のとあるパソコン教室の授業で筆者が題材に使った資料を加筆・修正したものです)