考え事と生活の記録

とりとめのない日々の記録です。

12/50 「居場所」の感想

 

 

12月半ばの旅行中に甲府駅の書店でたまたま目に留まって少し立ち読みをしていたらおもしろく、気になっていた本。なんとなく読んでおいた方がいい気がして、地元の奈良の本屋で購入して読了した。

 

 

最初に共感しやすい内容やキャッチ―なエピソードから入り、終盤に吉本興業の修羅場や事件など、どろどろした世界を描いていく流れが、東畑開人さんの「居るのはつらいよ」を連想させた。

 

 

 

 

 

www.hmv.co.jp

 

 

 

居場所というタイトルと、副題の「ひとりぼっちの自分」というのが対照的だ。

10年前、ぼくが学生だった頃から子ども食堂などが増えて行き、「居場所」という言葉に対してなんとなく、誰かが、困っている人向けに作り出すもの、というイメージがつくようになった。別に僕自身が誰かに「居場所」を与えられようとしていたわけでもないのだけど、この言葉を聞くとどこか、うざさというか、放っといてほしいという感覚を持ってしまう。自分の居場所は自分が好きなように決めるからと。

 

 

この本の著者である、ダウンタウンの昔のマネージャーでもある、よしもとの会長の大崎さんはむしろ、居場所なんてものを特定のところに求めるなと。むしろ、どこにも依存せずに、その土俵に乗っからずに生きていくようにと勧めてくる。

 

 

サバサバしていてカッコいいようだけど、本人は、悩みを相談することが苦手で一人で抱え込んでしまう超苦労人。もちろん立場的にも、かなりハードな経験をしている。僕がもし彼の立場だったら絶対ストレスで胃潰瘍とかになってるなと思う。

 

 

そんな人だから、ひとりになれる場所、孤独に耽れる時間、逃げ場は持っておいた方がいいと助言してくれる。銭湯だったり、カフェでもいい。自分だけの場所を確保しておいて、調子の良いときも悪いときも、ときどきは息を抜いた方がいいよと。

 

 

若かりし頃のタウンダウン浜田の行方不明事件も印象的だった。

急に忙しくなり過ぎていた時期に数日間仕事を放り出して行方をくらましていたときのこと。戻ってきた彼を誰も責めなかった。みんなが、ダウンタウンが無理をしていたのをわかっていたから。

 

 

特定の場所にこだわらないという考え方。

SNSやオンラインコミュニティでいろんな人と多層的につながっている今の時代には特に、1か所にしがみつかなくてもいいし、自分で考える時間を確保したほうがバランスもとれるし健全な気がする。

 

一方で、よしもとのマネージャーという、日々たくさんの人と関わりながら密な関係性のなかで働いてきた彼にこそ必要な処方箋とも言える。

 

自分はどこかに、密な関係性がないと寂しいというか、どっぷりと何かに関わったり、何かに追われていたり、そういうものを必要とするのも人間なのかもしれないなと思ったりもする。

そういえば、この本には、孤独に対する処方箋も、ちゃんと書いてくれていたな。

誰かといても孤独なときは孤独だし、一人でも孤独を感じることもあれば、何かに夢中でそんなこと思わないことだってある。

 

 

もっと密に人と関わりたいたいだなんて、福祉職で正社員で働いていた頃には思いもしなかったんだろうけどね。状況は人の考えを変えるものだな。