桜がしんどい。
新緑の季節の緑の色をした桜の木は好きなのだけど、花が咲いてやたらと艶やかに主張してくるこの時期の桜が苦手で、それまでどこに籠もっていたのかわからない人たちが桜を見にぞろぞろと川辺や公園に繰り出す様子も、見ていて酔ってしまう。
この時期の奈良は、いろんなところでピンクや白の桜の花が咲いていて、僕の家の近所の川辺もご多分に漏れずで、さっさと散ってしまえばいいのにと思う。そんなこと思わなくても、一週間ほどで散るのだろうけれど。
なんで日本人はこんなにも至る所に桜を植えたんだろう。そして、どうして桜が咲く時期に年度始めを迎えるんだろう。
あらゆることが、もごもごと動いていて、情報過多で、やることもやたらと多くて忙しくて、脳の空き容量が不足していて、ひょっとしたら鬱状態ってこういう脳の疲れを指すんじゃないだろうか。
福祉の仕事をしているくせに、人を見るのも嫌になった僕は、できるだけ人の少ない南部の山に電車で出かけている。
ほんとは植物園に行きたかったのだけど、この時期の植物園は派手な花がたくさん咲いてそうだし、休日だから人でごった返しているに違いない。
いつか行ったフィンランドの森のような静かでスピリチュアルな場所が近くにあればいいのだけど、そんな場所が無いから山に逃げる。
できるだけ桜を見ないやうにしながら、奈良の南の方の山に登る。